マーケットが大きい小ロットカラー印刷

ショートランカラーCTP研修会


小ロットカラー印刷の需要

●小ロットカラー印刷の需要は期待できるか
  印刷の概念のなかに、もはやDTPの普遍性は明らかになってしまった。製品を生産することが誰でも簡単に手軽にできるようになると、商売のフィールドを狭められてしまう。両刃の剣の喩えどおり、厳しい経営を強いられるわたしたち印刷業だ。得意先のオフィスに導入されれば、従来の軽印刷的印刷物が内製化されるのは時間の問題だった。受注の激減は予測できた事象であった。そんななかで、これまでの経営基盤を大きく変えていかざるを得ない状況になっている印刷業の生き残り策のひとつとして、小ロットのカラー印刷がある。カラーといえば、これまで大量印刷と相場が決まっていたものだが、技術の進歩はニーズの細分化を進める。
 小ロットカラーへの対応はこうした背景のもとで、本格的に取り組む必要が生まれたということだろう。
 この日は、残暑厳しいなかの研修会であったにもかかわらず、13社の熱心な会員企業が参加した。当然のことながら、明日の経営に燃える企業で、負け組みにならないための研修参加だ。研修会ははじめに、標題のテーマでリョービイマジクスのプリプレスシステム販売促進課、北村義仁氏の講演からはじめられ、このあと、同社の組版編集機EP530やA3版縦通し4色機3304シリーズや菊四裁寸延び522シリーズを実演した。
 また、同社の東京支店長三輪氏は「アメリカでも通常の印刷需要は、デジタル化にその市場をとられて減っているのが現状だ。これを打破するために、当社も川上のデジタル化にあわせて、川下の印刷もデジタル対応の方式をとるようになった」と述べる。
 以下は講演部分の内容を要約して掲載した。

●印刷業を取り巻く環境
  「小ロットカラーはリョービが先行している」と幅社長はあいさつのなかで紹介していたが、同社は一貫して小ロット印刷対応の小型オフ機を供給してきた。この延長線上にあるのが小ロットカラー印刷機への思い入れだろう。
 さて、北村氏の講演は現在の印刷業を取り巻く環境からはじまった。それによると、これまでは景気のいいときはいい、わるいときもでも比較的によかった、インキの伸びもよかった、という時代が続いたが、いまは、受注量は激減し、しかも料金は下落する一方。単色印刷は横ばいならまだしも、ジリ貧の状態が続いている。これまで印刷業者とその得意先は、仕事を受ける側と発注する側というように、一線を画した関係であったが、いまの経済環境の現状を改善するためには発注側、受注側両者がいっしょになって低コスト化をはかり、さらに時代にあったニーズと短納期を実現させていかなければならない、としている。
 またいまは、印刷システムの多様化がすすんでいる。印刷物をカラーと単色に分けた場合でも、カラーは高級プロセス印刷からミッドレンジ、ローエンドのものまでにDTP化によるCTP化がすすみ、単色印刷もおなじような傾向になってきている。つまりはっきりとした境界が薄らいできている。アメリカではもっと以前からこうした現象がおきている。
 近年、印刷機に対するニーズが変化している。オフ輪までも小ロット(1万枚以下)対応化をはかり、しかも高品質が要求されている。枚葉も極小ロット対応化、しかも多色(5、6色)、短納期が求められており、枚葉のカラー化が急速に進んでいるのである。欧米では小ロットカラー印刷機の出荷が増えている。カラー印刷物の増大、MacintoshのDTP環境、4色機への要望は強く、日本もいまは同じ状況になっている、と小ロットカラーは世界的な傾向であることを示した。
 さて、現在の経営環境の中から需要の確保や利益をあげていくには、新しい印刷システムの構築が欠かせない条件になっている。しかしこのシステム作りは、印刷業だけではできないわけで、メーカー、さらには需要家までもひっくるめたグロ−バルなものの考え方をしていかなければならなくなってきている。需要構造が変化しているのだから、当然といえば当然でしょう。Macintoshに象徴されるDTP化は、それまで印刷側にあった組版が、あるいは製版がクライアント側にわたってしまった。印刷の工程がさらに分化されたことになる。この現状は無視できないと、北村氏は述べている。
(以下、SHOWA会通信No.58参照)