●Web謄写印刷館
●「ガリ版ネットワーク」目次


ガリ版ネットワーク日誌 [2003年10月]


10月1日
八王子の岩崎博さんの「ガリ版蔵書票展」(31日まで)に出かける。会場は、五日市の秋川沿いにあるレストラン内のミニギャラリーである。岩崎さんは、謄写印刷業の後、編集や雑誌にイラストを添えた登山記などを執筆。山や小さな生きものを愛する作者のおだやかで衒いのない人柄のにじみ出た作品が並ぶ。孔版は蔵書票制作に向いていると思う。多色刷の技術をもっている人々の蔵書票づくりへのチャレンジを期待したい。
会員の岡野光一ご夫妻と会場で会う。(※会期中には、ネットワーク会員の来場がかなりあったと岩崎さんは喜んでおられた。)

10月某日
謄写輪転機から次々とはき出されるビラ、ビラ、ビラ…。欧米映画では、そんなシーンを見ることがある。'73年制作の「追憶」(バーブラ・ストライサンド、ロバート・レッドフォード主演)をテレビ放映していた。学生時代に知り合い結婚、そして離婚した男女の20年(1940年代半ば〜1960年代半ば)の物語。20年後も彼女は平和運動の活動家で、街行く人々にビラを手渡している。20年ぶりに再会した彼にもビラを…。欧米の孔版印刷機は輪転謄写機中心であり、日本、そして中国は手刷器中心。しかし、手から手へメッセージが手渡される風景は、時代そのものである。

10月某日
フジテレビの朝の番組「めざましテレビ」の企画“昔のよいもの”シリーズでガリ版印刷を取り上げるという。ガリ版の歴史についての取材依頼を受けたが、お断りする。ガリ版先生と、最後の謄写印刷店だけが日本の謄写文化のすべてという貧困さは耐えがたい。歴史の部分は20数秒だとか。

10月某日
「原紙をつくっているところを教えて。うちの会社は製造元から買っていた」という電話があった。例のごとく文房堂、伊東屋を紹介したのだが、「他にはないか」と不満そう。今どき、“うちの会社”は、原紙を何に使用するのだろうか。若者なら、こう言うだろう。「ありえな〜い」「わかんねぇ〜」と。そして私も首を傾げるばかりである。

(事務局・志村章子)
●SHOWA HP