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「祐生出会いの館」で
第1回国勢調査の資料を公開中

日本海新聞社


「祐生出会いの館」では、今年11月末まで、祐生が収集した第1回国勢調査関係資料を展示中です。「日本海新聞」2000年6月30日号の関連記事および7月22日号のコラム「海潮音」を、、同紙の許可を得て転載しました。


今年は五年に一度の国勢調査の年。西伯町下中谷の「祐生出会いの館」では、孔版画家の板祐生が収集した大正九年の第一回国勢調査の資料が大量に保存されている。「文明国の仲間入り」を合い言葉にした当時の意気込みが伝わってくる貴重なコレクションで、七月一日から始まる祐生の「貼り込み帖」を集めた特別展で公開される。
板祐生(一八八九 -- 一九五六)は玩具などのコレクターとしても知られるが、手作りの台帳に、各種商品のレッテルや標語、新聞・雑誌の記事などを張った「貼り込み帖」を数多く残している。
大正九年十月一日に実施された第一回国勢調査の資料もその中から見つかった。アルバム大の台紙には「第一回国勢調査記念帖・上巻」と書かれ、西伯町の日本画家に依頼した表紙で飾った凝った装丁。
調査に用いた申告書や照査表・世帯番号札をはじめ▽国勢調査を記念して発行された郵便切手・絵葉書▽飛行機からばらまいた宣伝ビラ・国勢調査の歌・ポスターなど啓発用印刷物▽宣伝活動写真・講演会の入場券 -- など国勢調査にかかわる様々な資料を網羅している。
「『あり』と書くのがせめてのたのみ 離れ離れに棲む夫婦」や「大家内 書いてしまって、てんこをし」などの都々逸を紹介したユーモラスな宣伝チラシもあり、当時の熱気ぶりが伝わってくる。
同館の稲田セツ子さんは「全国から集められた資料も多く、歴史的な第一回国勢調査の資料を残しておこうという祐生の思いが伝わる。あらためて祐生ネットワークのすごさに感心しました」と話している。
「張り込み帖」展ではほかに、関東大震災一周年記念、昭和天皇ご結婚、はし袋、マッチ、駅弁、羊かん、石けん、封筒の帯などの印刷物のコレクションが展示される。
(以上、6月30日「日本海新聞」)

「『あり』と書くのがせめてのたのみ 離ればなれに棲む夫婦」---。宴会の戯れ歌ではない。大正九(一九二〇)年、今からちょうど八十年前、わが国で初めて国勢調査が行われた際の宣伝チラシだ◆「祐生出会いの館」(西伯町下中谷)で開かれている孔版画家、板祐生(一八八九 -- 一九五六)が収集した第一回国勢調査の資料は、見飽きない。「大家内 書いてしまって點呼し」。子どもが五人も六人もいて十人以上の家族が珍しくなかった時代の話だ◆申告書に書いた後で、もう一度、書き忘れがないか点呼を取って確認しようと、呼び掛けたのだ。少子時代の現在とは月とスッポン。宣伝安来節というのもある。「ミスと二人でセンサス受けて並べて書き出すニュウホウム」とハイカラだ。どれもこれも、れっきとした役所が作ったのだ◆国家的一大イベントに取り組む意気込みの中にもユーモア、しゃれ、粋を忘れない。大正デモクラシー華やかなりしご時世ならでは。分校の代用教員だった祐生のコレクションは、郷土玩具を中心に、社寺のお札、駅弁の掛け紙、ポスター、マッチ箱など多方面にわたる◆当時は、「ガラクタばかり集める奇人」と地元では鼻つまみ者だったという。祐生の日記にも「私は変人と見られているだろう。でも、世間から忘れ去られるものに光を当て、後世に残したい」と記している。「いい子作り」に奔走する、いびつな現代社会。もっと出てこい、奇人、変人。国勢調査資料展は、十一月末まで。
(以上、7月22日「日本海新聞」)
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