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謄写器図譜 コンニャク版[1]

明治時代に丸善株式会社書店が発売した「軽便写字器械」(携帯用印刷器)の図。版式はコンニャク版。

宣伝コピーに、
《此器械は方今欧米諸国に於て旅行用具として専ら使用せらるゝ極て新式の物を今回模造し発売す乞う速に一個を購はれて実用に供せられんことを》
と《模造》を誇っていて、欧米文物の取り入れを急ぐ日本の文化状況がうかがえる。

(明治30年発行の雑誌『学燈』掲載の広告から)

明治中期と思われる「丸善早印刷器(パピログラフ)」のラベル。
上段左右のメダルは、明治20年の「東京府工芸品共進会」に「筆搨版」として出品した際の賞牌と思われる。

(『丸善百年史』上巻所収)

コンニャク版の原理

右は、欧米で1870年頃から使われたヘクトグラフの説明図。
まず底の浅い箱状の器にゼラチンを流し込んむ。次に、濃度の高い染料インキで紙に文字を書き、この紙をゼラチン面に当てて、ゼラチン面にインキを転写する。ここに印刷用紙を乗せて軽く押さえると文書が複製できる。条件がよければ数十枚の複写ができた。
(W.B.Proudfoot “The Origin of Stencil Duplicating”, 1972より)

日本でいうコンニャク版は、このヘクトグラフの原理を利用したもの。同じ原理による小型複写器が、1970年代までオフィスなどで使われた。
なお、ヘクトグラフ(hectograph)、パピログラフ(papyrograph)などの用語は、異なる方式の製品にも使われたので、かならずしも品名から方式(版式、印刷方式)を知ることはできない。

●SHOWA HP