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ガリ版ネットワーク日誌[1999年11月]

11月某日
毎年のように年賀はがきが発売されると、今年も残り少なくなったと実感する。それに加えて、今年は胸につかえていることがある。ガリ版ネットワーク〈第2期〉は、今春に終了して、今秋には新体制スタートを目論んでいたのだが、公私ともに何やら忙しく、懸案は次年に持ちこさざるをえなくなった。
現在、ネットワーク会員数は215(個人、グループ、団体・企業)を数える。そして、毎年賀状を謄写版でつくる会員も少なくないのである。「いつ、器材頒けてもらえますか?」などの問い合わせがあると、机の下にかくれたくなる。トラ年の前には、黄色いインキを求める人が多かったが、タツは何色だろうか。まだ、えのぐについての問い合わせはない。

11月某日
「クイズ赤恥青恥のものです」と電話がかかってきた。テレビ東京のクイズ番組(水曜・夜放映)で司会は古館市郎。「ガリ版やってる人を紹介して…」という、いつもの依頼であった。古館のしゃべりは大好きだけど、この種テレビ番組は苦手で、協力的になれない。担当者の話から冬澤未都彦氏に依頼したが、彼が引き受けなかったのでこちらに回ってきたことがわかった。もの好き、時代おくれ、シーラカンス等々、制作者のまなざしが決まりきっていて不快になった経験を何回も持てば、非協力的になるのは、むしろ当たり前である。

11月某日
11日遅れで、木枯らしが吹いた朝、教科書の版元・T社の編集者Sさんが訪れた。前日にSさんから「謄写印刷器を一式貸してほしい」との連絡を受けていたのである。制作中の小学校社会科教科書に謄写版が必要になり、さがしていたが、みつからず、あわてていたのだ。写真撮影は2日後にせまっていた。そんなとき「Web謄写印刷館」でガリ版ネットワークの存在を知ったという。
「どこかに謄写版の1台や2台はあると高をくくっていた」のだそうだ。「Web謄写印刷館」での出会いは、最後のチャンスというべきもの。
若いSさんは、堀井謄写堂の名も知らず、謄写版体験もない。「原紙に書いてみたい」という。「この鉄の板の上で書くんですね。書くというより刻む感じだなあ」が、ガリ版体験の感想だった。
貸し出したのは、戦中に製造の堀井謄写版三元式。ちょっと古いけど仕方がない(ガリ版ネットワークの器材は、今年の2月以来、山形謄写印刷資料館の収蔵庫に預かってもらっている)。他には、ヤスリ、インキ、ローラー、鉄筆、原紙(4ミリ方眼ケイ)、学校関連の印刷物など。ローラーのゴム部分が老化して固いのも気になった。Sさんは器材一式をかかえて、北風の中を帰っていった。
(99.11.18、志村)

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