●Web謄写印刷館
●「ガリ版ネットワーク」目次


ガリ版ネットワーク日誌 [2002年11月]


11月14日
朝日新聞(東京本社)に「神田発 ガリ版発明の老舗 不動産投資に失敗し倒産」(第3社会面)が掲載される。
創業から109年、日本人と共に歩んだ簡便印刷器を開発・販売した企業・ホリイ株式会社倒産の記事は、さまざまな波紋を広げた。その影響は、ガリ版ネットワークにも及んだ。「記事でネットワークの存在を知った」と20件ほどの問い合わせがあった。器材寄贈、入会希望、インク、ローラーの入手先、情報を求める等々。静岡県まで器材を取りに来てという人もあった。
ちょっと驚かされたのが、内田洋行の子会社からで、「ホリイ倒産後、うちの製品以外の謄写版の修理依頼がある。そちらでは修理のほうはやっていないのか?」との電話であった。静岡の人といい、この電話の主といい、ガリ版ネットワークは、各種工場、トラックなどをもつ大規模組織とみられているらしい! そういえば、「ホリイ印刷機の部品でNO.XXXXXありますか?」とのお尋ねもあり、電話のベルが鳴ると憂うつになった。
しかし思いがけぬ“宝物”もあって、器材や印刷物を寄贈くださった江本昭典さん制作の謄写版テキストが、ご本人の許可を得て復刻にまでこぎつけることができたのである。消えゆくものへの愛惜もあって、周囲の人々も同記事を話題にした。日本人にとって謄写版という印刷器は特別なものです。感慨しきり、と語る人も。

11月16〜17日
草野心平記念文学館で「詩風土の開花 ―― 昭和前期のいわき」展をみる。大正から昭和戦前、数多くの同人詩誌が福島県いわき地域で刊行されたのは驚くばかりである。なかでもガリ版印刷の詩誌が多く、同館収蔵の30誌110冊のうち56冊! これら同人誌に掲載された名前は1,104人をかぞえる。詩の朗読会、演劇、講演会、展覧会、路傍詩運動(電信柱に詩を貼りつける)など、いわきの詩人たちのパワフルで多彩な活動ぶりはどこからきたのか。
翌日、ガリ版文化史のなかにいわきの同人誌群を位置づける目的で「ガリ版文化史といわきの同人誌」について少々話す。

11月某日
銀座・伊東屋でスクリーン用の絹布、テトロン布を購入。同店にてもホリイ倒産が話題に。文具専門店としての責任と義務から謄写印刷関連消耗品(原紙、インクなど)の取り扱いを継続するとのこと。月に数人が謄写器材購入を目的に来店する由。これなどもホリイ倒産の波紋のうち?

11月某日
Tさんからの寄贈器材届く。ちょうど荷を開けて確認中にTさんから「着きましたか」の電話。きのうは「送りました」と電話があったばかり。こうした律儀な人が急速に減少しているのでは。こういう方は包装状態も立派なことが多い。「お宝がいっぱいで、よろこんでいます」とお礼を述べる。領収書を送った。

(事務局・志村章子)
●SHOWA HP