電通「2024年 日本の広告費」によれば、新聞広告費はコロナ禍で2020年に大きく減少した後2021年には少し回復しましたが、その後減少し続けています。その結果、2024年は3,417億円とコロナ禍前(2019年, 4,547億円)の75%の規模となりました。
新聞社が主体となって提供するインターネットメディア・サービスにおける広告費「新聞デジタル広告費」は、2022年までは増加していましたが、2023年から減少へと転じました。この背景には、新聞デジタル以外の動画広告への予算シフトや、広告単価の低下があります。
一方、雑誌広告費は2022年までは減少傾向にありましたが、2023年から2年連続で増加しました。これは、出版社・雑誌編集部などによるタイアップコンテンツのSNS上での二次展開や、広告主へのオリジナル企画コンテンツ提供などが増加したためです。
雑誌デジタル広告費は一貫して増加していて、2024年には637億円と雑誌広告費(1,179億円, 同年)の54%の規模にまで拡大しています。雑誌デジタル広告費が伸びている理由について、「日本の広告費」では以下のように分析されています:
「雑誌メディアの休刊や刊行形態の変更に伴い、ウェブメディアのリニューアルやSNSアカウントへのリソース強化が行われた。SNS上のコンテンツ拡充によってフォロワー数などが引き続き堅調に推移し、紙媒体やウェブメディアに起因しないSNS内で完結できるタイアップ広告が成長した。また、広告主のオウンドコンテンツの制作や動画の制作・配信など、出版社の強みであるデータ・コンテンツ制作力やコミュニティ力を生かした企画が堅調に推移し、引き続き出版社の広告収益を支えた」
新聞と雑誌の広告ビジネスを比較すると、新聞は「広告枠の販売」を主軸にしていることが(デジタルを含めた)広告費の減少につながっていそうです。これに対して、広告枠の販売から「広告主のコンテンツ企画・制作・活用支援」「SNSへのコンテンツ展開」へと舵を切ったことが、デジタルを含む雑誌広告が増加へと転じた推進力になっているようです。
こうした出版社の広告ビジネスの方向転換は、商業印刷市場の厳しい状況に苦戦している印刷会社の皆さまの参考になりそうです。ぜひ、顧客への『コンテンツの企画・制作・活用(SNS連携を含む)』支援サービスなども取り入れながら、さらなる売上・利益増大を目指しましょう!
ブライター・レイター 山下 潤一郎 様
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